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マーロウならこう言うね

〈常識の溝〉と〈教養の壁〉に挑む、慶應通信教育(71期秋期)法学部乙類入学準備クロニクル。

【戯曲を読む】 ソポクレース『アンティゴネー』 ~噛みにくい言葉に接する

ニコラシカです(@xaqihooo)です。春らしい陽気となりました。コートをようやくクリーニングへ。もういいでしょう。

今夜は、ぼくが主宰している、地元の読書会「こすぎナイトキャンパス」に参加してきました(ま、司会進行役なんすけど)。
https://www.facebook.com/ksgnightcampus/

この読書会にはふたつの開催スタイルがあって、
ひとつはいわゆる読書会、指定された課題テキストの感想をシェアしあうもの。
もうひとつは、シェイクスピアチェーホフといった作家(詩人)たちの戯曲(台本)を、〈声に出して〉読むという集いです。

後者の集いは昨春からはじまったもので、2016年2月で〈第1期〉が終了。1年間の成果としての最終発表会は、シェイクスピアロミオとジュリエット』を2月に発表しました。

毎回20人近くの方に参加いただいていて、満を持しての〈第2期〉のスタート。
今夜はその後者のスタイル、テキストはギリシャ悲劇『アンティゴネー』(中務哲郎訳、岩波文庫)です。

アンティゴネー (岩波文庫)

アンティゴネー (岩波文庫)

今回も16名の方が参加、前期に引きつづいての方とご新規さんも数名いらして、春らしいスタートの風景でした。
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アンティゴネー』のあらすじ(ネタバレ、がっつりあります)はこちらに譲りますが、この物語は同じソポクレースによる『オイディプース王』『コローノスのオイディプース』に続く、テーバイ*1サーガ・トリロジー(三部作)の掉尾を飾る作品(なのに、書かれたのは『オイディプース王』より前なんだとか)。

『オイディプース王』の話はみなさんも一度は聞かれたことがあるかと思いますが、「スフィンクスの謎」で有名ですよね。「朝は4本足、昼間は2本足、夕方は3本足で、声は1つの動物は何か」という謎々です。
それを解いたオイディプースは、ギリシャの古代都市国家テーバイの王になりますが、その前に彼には呪いとも言える神託が下っていたんです。彼は長じて、父親を殺し、母親と交わると。
物語はその神託通りに進行し悲劇らしい最後に至りますが、『アンティゴネー』の主人公アンティゴネーは、そのオイディプース王の娘なのです。つまり、彼女はあらかじめ「近親相姦」という〈罪〉の運命を背負っている。

彼女には、エテオクレースとポリュネイケースというふたりの兄がいるんですが、オイディプース王亡き後彼らはお互いに王位を争います。敗れたポリュネイケースはいったん他国へと逃れ、態勢を整えて再度テーバイの王位を狙います。
結局、ポリュネイケースはまた負けますが、エテオクレースとの相打ち。そして兄妹の叔父であるクレオーンが、テーバイの王に就くところが、『アンティゴネー』のプレストーリィとなります。

そして、クレオーンはエテオクレースはきちんと埋葬することを許しますが、ポリュネイケースは国家に対する反逆者として、彼の埋葬や一切の葬礼を禁止し、見張りを立ててその遺骸を監視させているんですね。
アンティゴネーは、その禁を破って、兄ポリュネイケースを埋葬するんです。妹のイスメーネーの反対にもかかわらず。

アンティゴネーの行為は人間として持つ自然の行為であり、彼女はそれを禁止するクレオーンと激しく言い争います。その死をも恐れない毅然とした彼女の態度はいったいどこから来るのか、というと、彼女はあらかじめ〈罪人〉だからだという解釈があるようです。

今回のテキストは、中務哲郎訳(岩波文庫には呉茂一訳もある)を採りました。なにより新訳であり、解説も丁寧なんですね。
それでも、使われている言葉は、ゴツゴツとして舌先で捌きにくいものでした。
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参加されているみなさんも、あちこちでつかえたり言いよどんだりして難儀していましたね。
でも、ぼくとしては消化しやすい言葉に慣れた今こそ、こういう言葉に接してもらいたかった。

噛みにくい、歯ごたえのある言葉。
脳と舌先を惑わす、骨太の言葉。

2000年以上前の言葉たちに出会える喜びと戸惑いとを、参加者のみなさんが少しでも感じてくれたらうれしいと思っています。

次回(5/19)は、シェイクスピアリア王』(松岡和子訳、ちくま文庫版)を〈声に出して〉読みます。

シェイクスピア全集 (5) リア王 (ちくま文庫)

シェイクスピア全集 (5) リア王 (ちくま文庫)

*1:ギリシャの古代都市国家。物語の主要舞台。